第8章 口付けに想い
風丸は家に帰ると早々に鞄を床に放り投げ、ベッドへと寝転がった。綺麗好きな彼は普段このような行動はとらないのだが、今日は無性にそうしたい気持ちだった。
目を瞑れば花織の切なげな顔がすぐに思い出される。風丸は彼女にそんな表情をさせる鬼道への激しい嫉妬と何とも言えない焦燥感が胸の中で湧き出て渦巻いた。
花織が本気で鬼道のことを好いていることなど、初めから分かっていたはずだ。そんな花織を説得して関係を築きあげて俺が代わりになるから、などと大口をたたいたのに、俺は何一つあいつを助けるようなことをしていない……。風丸はそう感じずにはいられなかった。
むしろ、俺のために花織を付き合わせて苦しめている。その事実が何よりも辛い。
それでも、花織を手放そうという気持ちにはなれなかった。どんな形でもいい花織の傍にいたい。花織の為に別れを切り出すという選択肢は無かった。
アイツを困らせてても、欲が強くても何でもいいから―――――。その想いを捨てることができずに、このまま歪な関係を続けることを風丸は選んだ。