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恋風

第8章 口付けに想い




しばらくして花織がベンチに戻った時にはすでに後半がスタートしており、秋や音無に酷く心配された。なんでもない、と顔を強張らせつつも返事を返し、いつもより一際大きな声援を雷門イレブンへと送った。結果は雷門の勝利に幕を閉じ、雷門中学は約束通りフットボールフロンティアの出場権を手にしたのだった。

「俺たち、フットボールフロンティアに出られるんだな」
「うん、おめでとう。一郎太くん」

嬉しそうに花織の方へ笑いかける風丸。彼女はどこか複雑そうな表情をしていたがそれを微笑みに変えた。だが、やはり風丸が花織の様子が可笑しいことに気付かないわけなどなかった。

「花織、なんだか元気がないな。何かあったのか?」

風丸が花織へと目線を合わせるように肩に手を置き、顔を覗き込んだ。その表情はとても心配そうだ。花織は胸が苦しくなる、原因は自分でむしろ自分は彼に対して謝らねばならない立場なのだから。

「一郎太くん……」
「ん、どうした?」

花織はこぶしを握る。風丸が優しい声で花織に問いかければ、花織は風丸から顔を逸らした。そして肩に置かれていた手を取り、そっと握る。

「花織……?」
「一郎太くん、ごめんなさい……」

花織は小さな声で呟く。その謝罪の意図が掴めなかった風丸は怪訝そうな表情を浮かべて花織の表情を見ようとするが、花織は俯いたまま顔をあげようとはしなかった。

「今日、彼にに会った。……帝国にいた時、好きだった人」
「……!」
「キス、されたの」

びくっと風丸の身体が動揺に揺れた。どうして、という疑問とやはりという思いが風丸の中で交錯する。ふと風丸は視線を落とす、自分の手を握る花織の手が震えていた。

「でも私、抵抗できなかった……。それどころか不快感や嫌悪感さえ覚えなかった。……ごめんなさい」

その言葉に風丸はまだ花織が帝国の誰かのこと、―――――鬼道のことを好いているのだと思う。しかしどうして、鬼道は花織へそんなことをしたのだろう。……きっと答えは1つだけだ。

「私、鬼道さんのこと未だに引きずってる、一郎太くんのことが好きなはずなのに。彼に靡いたりして……、最低だってわかってるの」
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