第8章 口付けに想い
花織がサッカー部のマネージャーとして慣れてきた頃、あの日サッカー部を見に来ていた豪炎寺が正式にサッカー部に入部した。あれから円堂がかなり熱心に説得したらしい。それでもフィールドを駆ける豪炎寺はどこか晴れやかで楽しそうだ、と花織は思った。
しかしそれとは対照的に豪炎寺の入部に対してどこか納得がいかないのが染岡だ。焦りを見せるその姿に花織は同情するような視線を向ける。私だって染岡くんの立場だったら嫌だもの。しかし、それでも豪炎寺の入部はチームにとって喜ぶべきことだった。
そんな日々が続いていた今日、尾刈斗中から雷門中サッカー部宛てに果たし状が届いた。あの40年間無敗だった帝国にどんな形であれ、勝利したためかあれから様々な中学校が雷門中に対して興味を抱いたらしく練習試合の申し込みが後を絶たなかった。顧問である冬海は始終面倒そうに断りをいれていたのだが、尾刈斗中からの果たし状は受けざるを得なかったそうだ。
試合は明後日、何とも奇妙な噂があるのだから花織としては試合しないほうが無難だと思う。しかし、理事長の娘を名乗る女の子に試合に勝利しなければ廃部だ、と半ば強制的に試合を受けさせられ今に至る。サッカー部の面々はやはりあまり乗り気だとは言えなかったが、この試合に勝てばフットボールフロンティアの出場権が与えられることが決まったため、キャプテンである円堂は乗り気であった。
「一郎太くんはどう思う?尾刈斗中のビデオ見て」
夕焼けに包まれる帰り道、花織は彼の手を握りながら言った。風丸の不機嫌は一晩で戻ったようで、何も知らない花織としても安心していた。
「そうだな……。変なチームだと思うがまだ何とも言えないな」
「そうだよね。……でも絶対に勝とうね。勝てばフットボールフロンティアに出られるんだから」
2人はもちろんサッカー部に正式に所属しているわけではない。しかし花織にしても風丸にしてもやるからには徹底的に勝利に貢献しようという考えは同じだった。
「そうだな」
ニコリと笑った彼は前を向き直って力強く言った。
「絶対勝つ、それだけだ」
まるでそれが、自分が何か大切なものを守るためのすべであるかのように。