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恋風

第8章 口付けに想い




花織が自分に嫌悪を感じている真っ最中、彼もまた自分の行動に嫌悪していた。練習中にまさか嫉妬していて機嫌が悪かっただけ、などかっこ悪くて言えるはずもない。自分の好きな人が半田やマックスと話しているだけでこんなに苦しくなるなど、なんと了見の狭い男だと思った。

しかしそれでも、不安で仕方ないのだ。帝国と試合して……いや鬼道に会ってから花織が自分の目の前から突然いなくなってしまいそうだ――そう心のどこかで感じている。

花織が試合を止めたとき、思わず息が止まりそうになった。嬉しかった、試合を見に来てくれ、そのうえ自分の身を案じてくれたのだと。しかし、その花織の前に立ったのは帝国学園のキャプテン鬼道だった。

どこか自分に対して向けられるものと似た視線を花織は鬼道に向けていた。また、鬼道も明らかに他の人間に対してとは違う表情を花織にたいして見せていたように感じる。

それを見たのを引き金にして……だろう。花織をとられたくなくて焦りが止まらないのだ。どれだけ自分を抑えようとしても風丸の中は不安でいっぱいになった。

風丸は花織の自分を好いてくれているという証明の言葉が決して本心でないことは悟っていた。もちろん彼女の気持ちは嘘をついているわけではないが、すべてが正しいかと問われるとそうとも言えない。

自分だけに彼女の愛が向いているわけではない……。そう分かっていたとしても風丸は花織を手放したくない、その気持ちだけしか持ち合わせてはいなかった。

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