• テキストサイズ

恋風

第8章 口付けに想い




楽しい女子トークに花を咲かせていればいつの間にか学校にての片づけも終わり、残すは帰るのみとなった。

「一郎太くん、帰ろう?」

花織は部室の前で円堂と話している風丸に声を掛けた。風丸はきりのいいところで円堂との話を終わらせると、花織へ笑顔を向けて円堂と別れた。その様子に花織は申し訳なさげに風丸を見つめる。

「ごめんね、邪魔しちゃったかな」
「いや、大丈夫だ。とりとめのない話だったし」

一瞬、2人の間に沈黙が走る。どことなく居心地の悪い空気だ。花織は一刻も早くそれを解消しようと風丸へと言葉を掛けた。

「あのさ」
「あの……」

しかしそれは風丸の声と重なり、夕闇の中へと消えていく。花織が驚いて風丸の方を向けば、風丸も同じ様な表情をして花織を見つめていた。風丸の髪がゆらゆらと揺れる。

「花織から言っていいぞ」
「ううん、別に大切な話じゃないの。……一郎太くんどうぞ」
「いや、いいんだ」

暫し、2人で譲り合いが続く。花織はこれでは埒が明かないと、何度目かの彼の勧めで彼に質問をした。

「今日、なんでもないって言ってたけど、調子悪そうだったから……。大丈夫?」

花織がそういって心配そうに風丸を見つめれば、風丸は驚いたようなしかしどこか照れくさそうにそっぽを向く。よほど想定外の質問だったのだろう。彼は目に見えて動揺していた。

「あ、ああ……、大丈夫だ。何でもないんだ」

ただ嫉妬をしていただけ、風丸はそんな情けないことを花織に知られたくないと思い、事実を隠そうと返答をした。しかしそれが裏目に花織の心をちくりと刺激する。

私には言えない事だろうか……、花織はそう思う自分に嫌悪を感じた。何しろ、彼に対する隠し事が多いのはきっと自分の方なのだから。

「そう……?でも、何かあったら言ってね。やっぱり心配だから」
「ああ」

風丸の笑顔にどこか切なさを浮かべて花織がはにかむ。心配なのは本心、好きだから心配に決まってる。花織は風丸との会話が途切れると浅く息を吐く。

私は、一郎太くんだけを好いているのかと問われても頷ける自信が無い。所詮、自分はそんなズルい人間だ。

/ 333ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp