第8章 口付けに想い
「な、何でもない!!ちょっと考え事をしてただけだから。心配するなよ」
「そう……?」
風丸の言葉に納得できず、花織は怪訝な表情を見せる。しかし、風丸が何ともないというのだからとしぶしぶ彼の元から離れ、ベンチにて学校に戻る準備をする秋のそばに立った。
「秋ちゃん」
「どうしたの?」
「みんな調子よさそう?……一郎太くんが元気がないし、染岡君も気が焦ってるみたいだから心配」
使い終わったタオルに手を伸ばし、秋の隣に花織は並んだ。
「そうねぇ。……他の人たちは大丈夫かなって思うけど、風丸くんには気が付かなかったかも」
秋が考えるような表情をしていればいつの間にやら戻ってきた春奈がニコニコと明るく笑いながら花織の顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですよ!風丸先輩は花織先輩のことで元気がないだけですから!」
「え、?私……?」
花織はわけがわからず、小首をかしげると春奈は花織の両手を掴んだ。そして楽しげに掴んだ腕を上下に振る。
「そうですよ!ふふふっ、いいですねぇ~青春ですねぇ~」
「音無しさん……」
春奈の様子に秋は苦く笑った。