第1章 それはまさに
「すっごく早かったですね!よかったら俺達と走りませんか?」
俺という言葉から察するに一見性別のわからないこの彼もきっと男の子なのだろう、と花織は思う。
「いいですけど……。あなたは?」
花織が首を傾げながら少年の素性を訪ねた。
「俺は宮坂了、男子陸上部1年です。月島さんですよね」
「私の名前、どうして?」
「風丸さんに聞きました!じゃあ行きましょう!」
「ちょ、ちょっと待って!」
無邪気に笑う少年は花織のことなど構わずに歩を進めようとする。花織は慌てて宮坂を止めるとタオルで汗を拭いている花岡へ声を掛けた。
「あの、花岡せんぱ」
「行けばいいじゃない。……私達5時半で上がるから。鍵は返しといて」
冷たく花織を見下ろしながら花岡はそういうとほかの部員の所へと歩いて行ってしまった。花織は彼女の荒々しい言動に目を丸くしたまま立ち尽くした。どうしてここまで冷たくされなければいけないのだろう、私が何かしたのだろうか。
「気にしないほうが良いですよ」
「え?」
花岡の背中をにらみながら宮坂が言う。
「どうせ僻みですよ、あの人いっつも自分のスピードを鼻にかけてましたから。……それより、早く行きましょうよ」
瞳を輝かせて宮坂が言う。さらりと髪を靡かせて花織は宮坂の後について行った。