• テキストサイズ

恋風

第7章 目に映る帝国



「え……っ、あ、花織。……どうしたんだ、急に」

堪らなくなって花織は風丸の胸元に縋りつく。彼は驚いたようだったがそれでも確かに花織の身体を受け止めた。罪悪感と胸の鼓動に苦しむ息を吐いて、花織は呟く。

「私、一郎太くんのことが好き。誰よりも好きだから。……だから」

急に口を付いて出た言葉はそこで迷子になってしまった。次の句を何と継げばよいかわからない。だから……なんだというのだろう。その時、迷う花織の髪にそっと風丸の手が触れる。

「花織……」
「……?」
「無理に言わなくていいから。俺はどんな花織だって好きだ」

酷く優しい言葉に花織は胸が軽くなるのを感じた。

「ありがとう……」

この温もりを大切にしたい、いつまでも愛おしく思っていたい。

***

夕焼けの滲む空の下、花織と風丸は並んで帰路についていた。久しぶりに彼と2人で帰るのだ。小恥ずかしいようなそれでも嬉しいようなそんな気持ちに包まれながら風丸の顔を花織は見つめる。今日の彼を見ていて1つ決めたことがあった。

「一郎太くん」
「どうしたんだ?」

風丸は花織の顔を見て微笑んだ。その笑みに花織は微笑み返すと、話を続けた。

「サッカー部で臨時マネージャーできないかな?」
「えっ……!?」

風丸の表情が驚愕に変わる。そう、花織は今日風丸のサッカーの試合を見ていてマネージャーという立場で彼を見守れたらと感じたのだ。

「だって今日みたいに私の知らない所で無茶されたら嫌だから」

きっと彼はまた無茶をするだろう、だからこそ傍にいたい。それに彼のいない陸上部には花織の居所はないのだから。しかし……、本心は違うかもしれない。

「俺は嬉しいが、陸上はいいのか?」
「もう決めたから。一郎太くんの足がどんなふうにサッカーで生かされるのか見てみたいの」

陸上は自主練で何とかなるはずだから、と花織がそういえば彼は納得したとはいえないものの、反対ではないという表情を見せた。

「じゃあ明日、一緒に円堂に頼みに行こうな」
「うん」

夕焼けの道、花織は複雑な思いを抱きながら風丸の傍へと寄り添った。

/ 333ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp