第7章 目に映る帝国
予想だにしなかった質問に思わず、花織は鬼道を見つめる。日の光でゴーグルの中の赤い瞳が透けて見え、思わず顔が熱くなる。
「いや、あの……。その」
「顔が赤いぞ。……フッ、まぁいい。……またな」
鬼道は花織の耳元で低く囁きかけると、マントを翻し花織に背を向けた。1人残された花織は呆然と突っ立ち、彼の赤いマントを見つめる。残ったのは複雑に赤く染まる頬と答えの出ない疑問だけだった。
鬼道さんは何故……、花織は目を細める。何故心配を、何故またななどと。彼は私を嫌っていたのではないだろうか。……私には分からない、鬼道さんの事がわからない。
それでも一番腹立つのは自分自身の事だ、どうして今更揺れる。惹かれる理由も分からない。大切な人がいるはずなのに。
「花織……?」
花織が壁に寄りかかり俯いたままでいると、彼の声が聞こえた。
「一郎太くん……」
「こんなところにいたのか。……心配したんだ、急にいなくなるから」
「ごめん……なさい」
風丸は今、試合に勝ったばかりで、みんなと勝利の喜びを分かち合っていたいはずだというのに……。そう思うと花織は心の底から申し訳なくなった。加えて原因が鬼道に会っていたという彼にとって背徳的な理由だ。それが余計に花織の心に突き刺さる。
「気にするなよ。そんなことより、今日花織が来てくれて嬉しかった」
「え……?」
花織が小さく声を漏らし、風丸の顔を見つめれば風丸は照れくさそうに頬を掻いた。
「見に来てくれないと思ってたんだ。でも、お前が俺の名前を呼んでくれて」
ああなんて、花織は制服の胸元を握りしめる。焼け付くような胸の痛みが花織の呼吸を麻痺させた。こんなに自分を好いてくれる人がいる。これほど些細なことを幸せと感じてくれる人がいる。……なのに私は。