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恋風

第7章 目に映る帝国




どくんと大きく胸が高鳴った。花織が名前を呼ばれて振り向くと、ユニフォームを着たままの鬼道が彼女の背後に立っていた。

「鬼道さん……。何か御用ですか」

あえて目を合わせないように、花織は俯く。鬼道は花織の方へと歩み寄りにやりと笑う。

「フッ……。お前、雷門に来ていたんだな」
「……」

鬼道は何が言いたいのだろうか、花織は固く目を閉じたまま思う。何か都合の悪いことでもあるのか……。

「急にお前が消えて少し心配したんだぞ」
「え……?」

思わず花織は顔をあげ、鬼道を見つめる。不敵に微笑む鬼道の姿に抑えられない胸の鼓動を感じた。あの時掛けられた酷い言葉でも、今掛けられた言葉によって払拭されたような気さえする。どことなく虫の居所が悪い。

「お前、俺をひっぱたいたとき手帳を落としていっただろう?」
「あ……」

花織は口元を手で押さえる。今の今まで忘れていたのだ、帝国に在学していた時に使っていた手帳のことなど。あれには花織の予定や練習メニューが綴られている。引っ越しの前に失くし、持っていても仕方がないだろうと割り切った品だった。

「俺が持っている、また会えたら返してやろう。……それと」

じりっと鬼道が花織の方へと詰め寄る。花織は後ずさったがすぐに壁が彼女の退路を塞いだ。彼が近づくとともに花織の胸の鼓動はどんどん激しくなっていく。そして彼女を追い詰め、加虐的に笑んだ鬼道は花織の顔の横に手をついた。

「月島、お前にとってあの青髪の男はどういう存在だ?」

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