第7章 目に映る帝国
「ふざけるな……。こんなの……っこんなのサッカーじゃねぇっ!!」
花織の言葉が声とはならずに零れた。彼女の眼前では風丸が円堂を庇い、頭からボールに突っ込んだところだった。何を無謀なことを……そしてそのボールの威力に風丸の身体はゴールの中へと弾き飛ばされた。
「風丸っ!!」
「風丸くん!」
「風丸!!」
雷門イレブンの声が風丸を呼ぶ。花織は肩に置かれた豪炎寺の手を無意識に振り払う。そしてなりふり構わずにグラウンドへと駆け出した。
「おい……!」
花織を引き留めようと伸ばされた豪炎寺の手が空を掴む。そして花織は先ほどの皆の声とは比べ物にならないほど大切な彼の名を響かせた。
「一郎太くんっ!!」
叫び声が選手たちの視線を集める。花織はラインぎりぎりの所で足をふみ留めた。さすがにフィールド内に入るのは同じスポーツをするものとしての理性が制した。花織の瞳からは一筋涙が頬を伝っている。
「花織……?」
地に伏した風丸が彼女の名を呟く。叫んで力が抜けたのか花織がその場にへたり込むと花織の顔を影が覆う。睫毛を震わせ花織が顔をあげた。
「月島か……」
「き、どうさん……」
口元に微笑みを浮かべて鬼道が花織を見下ろす。ぞわりと花織の胸に痺れが走る。鬼道は花織と風丸を見比べ、にやりと微笑んだ。すっと花織の傍に屈み込んだ鬼道はそっと花織の涙を指で拭い、低い声で囁いた。
「あとで話がある。……この校舎の裏門に来い、この試合の直後にだ」
花織が言葉を返す前に鬼道はマントを翻して試合へ戻っていった。呆然と座り込んだままの花織はその彼の背中を見つめるしかない。
「花織ちゃん!」
そのとき、花織の名を呼び肩を掴んだのは反対側のベンチにいたはずの秋だった。その背後には青髪の少女が心配そうに花織を見つめている。秋は心配そうに花織の顔を覗き込んで優しく言葉を掛けた。