第7章 目に映る帝国
花織が言葉に詰まったと同時に耳を劈くような試合開始のホイッスルが2人の会話を止めた。2人の会話はそのまま途切れ、試合の方へと意識が向けられる。
初めは雷門は調子がいいのか帝国相手に攻めているように見えて、観客も湧き立っている。しかし……、花織は強くこぶしを握り締める。
「帝国はこんなものじゃない……」
「……?」
豪炎寺が怪訝そうにちらりと花織を見た。花織はそんな豪炎寺には目もくれず不安げに顔を顰めながら試合を見ている。何度も鬼道に誘われて練習を見ていたのだ、彼らの普段の動きがどの程度の物だったか位覚えている。
今の動きはウォーミングアップにさえなってない。
染岡がシュートを放ったがそれは帝国キーパーの源田にあっさりと止められた。源田は鬼道に声を掛けボールを彼の元へと投げる。ボールを受け取った鬼道の口元はにやりと怪しく歪められた。
あの人……だ、花織の心が大きく音を立てる。
「ああ……。始めようか、帝国のサッカーを」
鬼道の呟いた言葉によって彼らの本当のウォーミングアップが終わり、試合が始まった。
それからの試合は、いや試合と呼ぶのが正しいのかすら観客にはわからなかった。雷門は全くと言っていいほど帝国学園に歯が立たない。鬼道の発言、あれから数秒と経たないうちに雷門は1点リードされてしまった。キックオフが繰り返されるたび、それは目にもとまらぬ速さで帝国側の点数と化した。しかも帝国イレブンは点を取るだけでは飽き足らず、雷門イレブンのメンバーに危害を加え始めた。
「酷い……」
試合展開のひどさに花織は思わず顔を覆う。こんなのサッカーじゃない……、そして事の発端は花織の想い人だ。いや違う、花織は首を振る。決して鬼道はこんなことする人じゃない、最後こそ酷いものだったが帝国にいたあの1年間、彼は優しく声を掛けてくれていたのだ。