第7章 目に映る帝国
翌日、授業にも身が入らないまま花織は放課後を迎えた。試合を見るかそれとも見ないか頭の中ではそればかりが占め、他を考える気にはなれなかった。仲の良い友人に相談することもできない。なぜなら半田は元からのサッカー部であり、さらにマックスも今回助っ人として試合に参加するという話を直接彼から花織は聞いていた。そして言わずもがな、秋はサッカー部のマネージャーである。
はっきりと自分の意思が決まらないまま、花織はグラウンドからは死角になっている場所からグラウンドを見つめる。サッカー部のユニフォーム姿に身を包んだ風丸を視界に捕えれば、ふっと微笑みが浮かぶ。その微笑みは花織がやはり風丸を心から好いているのだということを悟らせる。
「月島……?」
微かに聞こえた自分の名前に花織はその声の主を探す。花織のやや後方にはどうやら先客がいたようだった。白く逆立った髪、鋭い目つきと浅黒い肌そして端正な顔立ち。転校生の豪炎寺修也だ。
「豪炎寺……くん?」
「ああ」
「豪炎寺くんも見に来てたの?」
花織がそう問いかけると豪炎寺は花織から視線を逸らし俯いてしまった。気まずい沈黙が2人の間に走るがそれは長く続かなかった。すぐに校舎の外から大きな音が2人、いやその場にいた全員の意識を集める。校門の前には大きな車とも何とも言えない乗り物が止まっていた。
「あれは……」
帝国のサッカー部の……、花織は顔を顰めて制服のスカートの裾を握りしめる。心臓がドクンと大きく音を立てた。車のようなその乗り物の扉が大きな音を立てて開くと中から帝国の一般生徒――――そしてサッカー部有志が現れた。
その先頭を切って堂々と歩くあの人の姿を見つめた花織は身を切られる様な胸の痛みに目を細める。久しぶり……あの人の姿を見るのも。マントにゴーグルなんて最初は可笑しいって思ってたのに。