第7章 目に映る帝国
秋は夕焼け色に染まった空を見上げながら花織に言葉を掛けた。
「花織ちゃん、風丸くんがんばってるよ。ものすごく一生懸命なの。まるでしっかり者の円堂くんがいるみたい。それにね、元々運動神経もいいからもうほかの部員に追いついてるくらい」
秋は花織と風丸が喧嘩とは言えないほどの微妙な関係になっていることを知っていた。だからこそ、2人の仲直りのきっかけを作るべく話を切り出した。
「そう、なの?」
サッカーをする風丸の報告に花織は言葉に詰まる。そうなのか、と納得するしか秋の言葉を受け止めるほかがない。ただ、風丸がサッカーになじんでいる……、そう聞くと心が針で突いたようにちくりと痛んだ。
「うん。だから、明日の試合見に来ない?」
「私がサッカーの試合に……?」
肩に掛けた鞄の紐を力強く握りしめながら花織は髪を揺らす。短い髪は微かに花織の肩に触れて動きを止めた。
――――見てみたいような気もする。彼があの蒼い髪を揺らしあの圧倒的な速さでフィールドを駆ける姿を。無論、相手が帝国でそんなものは見れないだろうとは分かっていても。……だが、花織に決断を悩ませる原因もまた帝国だ。
一目あの人を見つめれば花織の心はどうなるだろう。思い出だけでこれほど悩み、焦がされているのだ。もしかすれば気持ちは大きくあの人へ傾くかもしれない。そうすれば風丸を酷く傷つけることになる。
「とにかく一晩考えてみて?試合は明日の放課後だから」
「うん。……考えてみる」
サッカー部の部室へと戻る秋の後姿を見つめて花織は1人複雑な気持ちで俯く。どうすればいい、どの選択が正しいのだろう。思い悩んでもそんなものは浮かばなかった。