第6章 雷門サッカー部
「馬鹿だな、俺も」
花織の背中を見つめて風丸は一人呟く。帝国の名を出せば花織を不安にしてしまうということは分かっていた。でも、風丸は円堂たちを助けたかったのだ。円堂とは幼いころからの友人で半田には先日の恩もある。もちろんそれだけではない、やはり彼からサッカーを奪うのが妥当ではないと思うからだ。
しかし、彼の心の中でそれとは別にどこか欲のような感情もあるのも確かだった。花織の想い人、そいつは帝国のサッカー部にいるはずだ。花織を想う人間……、いや恋人として不謹慎ではあるがそいつのことを知りたかった。
己がこれほど恋焦がれる彼女に今も思われ続けている奴……。それはいったいどんな人間なのだろうか……。
***
風丸を置いて1人で家まで帰ってきた花織は部屋に入るなり鞄を放り、ずるりと地面にへたり込んだ。何かの因縁だろうか、どうして花織の目から見ても明らかに弱小チームである雷門に前回の全国一のチームが試合を申し込むのだろうか。
花織が何を言おうと風丸はサッカー部を助けに行くだろう。……彼の事が心配だ、何も起こらなければ良いが……。いやそれよりも、花織の心の中で何か燻るものがあった。
聞くところによれば試合は雷門中学のグラウンドで行わられるらしい。ということは来るのだ帝国が雷門に。あの人が雷門に……。
花織は思わず首を振る。何を考えているのだろうか、私には私を想ってくれる恋人がいる。それなのにあの人を思い浮かべるなど彼に対して失礼だ。
しかし気持ちは収まらない。彼を忘れようとこの二週間、風丸の傍で過ごしたがふとした瞬間にあの人を想ってしまう。あの人なら何と言うだろう、あの人ならどうしただろう……。自分の中で風丸の存在が大きくなっているのも事実だ。しかしそれと同時に存在するあの人への想いも全くと言っていいほど褪せない。
だから、こう思ってしまうのだ。……あの人に、鬼道さんに会いたいと。
最低だ、花織は顔を伏せる。自分を大切にしてくれる恋人がいるというのに。こんなずるい自分は消えてしまえばいい。そう思いながら花織は瞼を閉じた。