第6章 雷門サッカー部
心のどこかで思ってしまう、彼もサッカーに取りつかれてしまったら……。彼も私のことを何とも思わなくなるのではないだろうか。今でもあの人を想い続けている花織が言えた義理ではないが、風丸にも嫌われてしまったら。そう思うと胸が締め付けられるように苦しい。
「サッカー、か……」
花織は風丸から視線を逸らしながら小さく呟いた。
花織のその言葉に風丸がはっと息を呑む。花織の想い人については半田たちから聞いている。花織はそいつと自分を重ねている。……不安になっても仕方がない、と風丸は思う。
「花織、そういうわけじゃない。別にお前のことを切り捨てる気はないさ。俺が花織を好きになったんだから」
諭す様に風丸が花織に言葉を掛ければ、その言葉に少しだけ安堵し、花織は唇に込めていた力を緩めると小さく呟いた。
「対戦相手はどこなの?」
花織が容認を示すような微笑みで風丸を見つめれば、今度は風丸が気まずそうに花織から視線を逸らした。だが、隠しているわけにはいかない。放っておいても耳に入ってしまうことだ。
「帝国……、学園」
「帝国……!」
花織の表情が凍る。帝国……あの人のいる、帝国学園。帝国学園サッカー部の事はサッカー関係者でなくとも元帝国生であればやはり知っていた。帝国学園のサッカーは、弱者を認めないサッカーを基本としている。負けたチームの学校を破壊し、選手を傷つけることなどザラだ。そんな帝国が雷門を弱者とみなさないわけがないことは、火を見るより明らかだった。
花織はこぶしをギュッと握る、身体は堪えきれずに震えていた。もしも風丸が怪我をしてしまったら?そんなの耐えられない。
「ダメ、帝国はダメだよ……。お願い、やめて」
「大丈夫だから、な?花織、落ち着け」
自らの腕を掴んでいる花織の手に風丸は触れ、安堵を促す様に彼女に囁く。彼の柔らかな口調は確かに花織に多少の安堵感を覚えさせたが、それでも花織は収まらなかった。
「ごめんね。少し1人にさせて……。今日は1人で帰るから」
「花織……!」
風丸の腕を押しのけ風丸に背を向ける。なんとも言えない感情が花織の心の中を浸していった。