第6章 雷門サッカー部
「ねぇ、辞退ってどういう事?」
震える声で花織は風丸に問うた。同じ陸上をする者。いや……、スポーツをする者として風丸の判断は解せなかった。なぜなら彼は今日も変わらず練習に参加していたのだし、なにか複雑な家庭事情を抱えているわけではない。少なくともそれを仄めかすようなことはしていなかった。風丸は困ったように眉根を寄せたが静かに花織の問いに答えた。
「花織、俺サッカー部の助っ人に行くことにしたんだ」
花織の中でびりっと電流のようなものが走り、そしてその後に背筋がと冷めていくの感じた。助っ人?いやそれよりもどうしてサッカー部に……。
「えっ……。そんな、どうして?」
「もう決めたんだ。サッカー部は来週の試合に勝てないと廃部になる。だから協力してやりたい」
円堂が今日声を掛けていたのはこのことだったのか、と花織は思う。しかしだからと言って風丸がサッカー部の助っ人に入る必要はないだろう。帰宅部なんて大勢いる、他にも暇な人間など山ほどいるはずだ。花織はやはり納得がいかないのか、風丸の腕を掴んだまま風丸に食って掛かる。
「来週、大会なんだよ?……中学生の陸上競技大会で一番大きな大会で……。選手に選ばれなかった先輩もいる」
自分の身を置いてまで先輩たちは選んでくれただろうに。そう花織が俯けば風丸は花織の肩に手を置き、そっと彼女の顔を覗き込んだ。
「花織、俺は円堂たちを助けてやりたい。俺には来年がある、でも円堂たちは今度の試合で負けてしまえば終わりなんだ。……同じスポーツをやっている人間として放っておけない」
風丸の真剣な口調に花織はそっと目を開く。真摯な表情の風丸を見ていて花織は確かに風丸のいう事も一理あると納得した。花織は微笑む、私を助けてくれた優しい彼だ。そう思うのは当たり前の事なのだろう。
しかしどこかで不安な気持ちもある。サッカーだ、彼が助っ人に行こうとしている部はあの人も所属していたサッカー部。サッカーというスポーツはどこか人を虜にしていくような気がする。だからこそ帝国でもサッカー実力主義が蔓延していたのだ。