第5章 エールを君に
教室の戸を開けると、ざわりと教室内の空気が一転する。花織の松葉杖は特に目を引き、ひそひそと何があったのか情報交換をしているクラスメイトの姿もちらほらと見える。それでも花織も風丸もクラスメイトの視線など全く気にする様子をみせなかった。風丸は花織を気遣いながら花織を席に座らせる。
「おはよう!花織ちゃん」
「秋ちゃん。おはよう」
花織が風丸に礼を言った後唐突に声が掛かった。花織がゆっくりとそちらを向けば、満面の笑みを浮かべた秋が嬉しそうに花織に言った。
「風丸くんと上手くいったんだね!」
「あ、秋ちゃん!」
秋が大きな声で花織に声を掛けたので、さっき散ったはずの視線が再び集まるのを感じて花織は思わず顔を伏せる。風丸と……などと言われることがまだどこかむず痒く気恥ずかしい。しかし同時に嬉しい気分でもあった。
「……うん」
先日までとはちがう晴れやかな笑顔で花織は秋に頷いた。
***
秋と花織のやり取りを横目で見ながら風丸が席に着くと、とんとんと肩を叩かれる感覚におもわず髪が揺れた。風丸が振り返ってみるとそこにはマックスとその後ろに半田が立っていた。その表情はにやにやという笑みを浮かべている。
「おはよ、風丸」
「ああ、おはよう」
マックスの挨拶に風丸が返事を返すと、マックスはやはりにやにやと笑いながら頭の後ろで腕を組む。
「上手くいったみたいだね、よかったよかった。君たち見てるともどかしくてさぁ」
「ああ、迷惑かけたな」
風丸はマックスと会話をしながらもちらりと半田に視線を向ける。半田はどう思っているのだろう、風丸は半田の想いからそれが気になった。だが半田はいつものように明るく笑みを浮かべている。
「ホントによかったな!花織のこと大事にしてやれよ?」
何ともない、いつもの半田が風丸の肩を叩く。しかし風丸は半田が自身の心を隠していることを察した。きっと気遣ってくれているのだろう……。でも、自分は半田に対して何もしてやれない。背中を押してもらったやつに偉そうなことは何も言えない。
「ああ、絶対に大切にする」
「あはは!お熱いね。……それじゃ僕はそろそろ教室に戻るよ、じゃあね」