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恋風

第5章 エールを君に




松葉杖をついていつもより早めに家を出る。彼女の両親は忙しく、とても花織を送っていく余裕はなかった。そのため、自分の歩くスピードを考え少し早めに家を出る必要があった。家から雷門中への距離はそれほど遠くないため、時間さえ気にしていれば大丈夫だろう。

「花織、おはよう」

花織が家から出ると風丸が家の塀にもたれ掛け、立っていた。

「い、一郎太君!?どうして……!」

どうして風丸がこんなところにいるのだろうか。あまりに驚いたため、花織は松葉杖を突きそこない、身体のバランスを崩してしまった。

(倒れる……!)
「花織!」

近づいてくる地面に覚悟を決め、固く目を瞑ったその時だった。ぎゅ、と優しく身体を支えられる。覚悟していた衝撃が未だ身体に来ないので、花織が恐る恐る目を開ければ風丸の横顔がすぐそばにあった。

「……っ」

カッと顔がほてるのがわかる。風丸の綺麗な横顔が心配そうに花織を見つめた。

「大丈夫か……?」

彼の吐息がかかる。花織の心臓はもはや飛び出そうなほど激しく脈打っていた。そんな時でもこんなことが前にもあったな、と冷静に別のことを考えたりもしていた。

「なんか、こんなこと前にもあったよな?」
「……うん」

花織の身体を支えていた風丸の腕が強く花織の身体を抱きしめる。幸い今は人はいないが、いつ誰が通るか分からない。それでも風丸は気にしていないのか、またそれとも気が回っていないのか花織の身体をしっかりと抱きしめていた。

「……花織」
「なに……っ」

彼の唇が軽く花織の頬に触れる。花織がその事実に呆気に取られていると、風丸は顔を真っ赤にして花織から目を逸らした。花織は呆然としたまま自分の頬に触れる。風丸は花織の肩から鞄を取り上げると花織に背を向けた。

「鞄は俺が持つから」
「あ、ありがとう。……でも、悪いよ」
「いいから、な」

そういいながらふいと横を向く風丸だが、松葉杖を突いている花織が歩いている最中はずっと花織の様子をちらりちらりと確認している。やはり風丸は優しい人だ。その視線に花織は気が付くとふっと柔らかい微笑みを返した。

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