第5章 エールを君に
「月島……!」
随分と長く花織が風丸の問いに答えあぐねていると風丸が花織を呼んだ。花織が我に返ると優しい顔をした風丸が目の前にいて、またきゅっと胸が切なくなる。
「俺はお前の助けになりたい。月島がどんなに他の奴のことが好きでも俺が代わりになれるなら、それで月島が楽になるなら、俺はそれでいいから。本当に月島のこと好きなんだ」
そんなこと、言わないでほしい。どうして彼はこんなにやさしいのだろう。これでは甘えてしまう。……彼の傍にいることを望んでしまう。
「私……、まだ初恋の人のことが忘れられない。今だってはっきりと風丸くんに対してと同じくらいあの人に好意を持ってる。彼と風丸くんを重ねて、風丸くんを傷つけるかもしれない。……それでもこんな……、こんな狡い私でも、いいの?」
「俺は、月島の助けになれたらそれでいい」
風丸の言葉に思わず涙がこみ上げる。これほどまでに人に想ってもらえているという事実が胸にしみた。想い人からの優しい言葉はこれほど温かいものなのかと感じる。そしてその暖かさの分だけ、あの人と風丸を比較することに対して罪悪感を感じる。花織は制服のスカートを掴み、ぽろぽろと涙を零した。
「私、風丸くんのこと傷つけたんだよ?それでも本当に……?」
刹那、ふわり。形容するならそんな感じで風丸の腕に花織は抱かれていた。花織を抱く風丸のその腕は微かに震えている。
「いいんだ。絶対に俺がそいつのこと忘れさせるから。だからそいつじゃなくて、……今だけでも俺を見てほしい」
言葉をかけられ、花織が顔を上げると優しく目を細めて微笑む風丸の顔が目の前にあった。花織と風丸との視線が絡み合う。とくん、とくんと2人の鼓動が早くなっていく。
「好きだ……。好きなんだ月島」
とうとう、素直な気持ちが花織の口から零れた。
「……私も。……風丸くんが、好き」
確認するように呟いて静かに花織は目を伏せる。ゆっくりと風丸の顔が自分に近付いてくるのが分かった。そして、優しく風丸と花織の唇が重なり合った。