第5章 エールを君に
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風丸はゆっくりと花織の傍へ歩み寄ると、すぐに椅子を引いて花織を座らせる。そして花織の顔を覗き込むように床に膝をつき、花織を見上げた。
「月島……。怪我、大丈夫か?」
「……うん。軽く捻っただけだから」
風丸の優しげな瞳から花織は視線を外しながら答える。
「月島……」
気まずい空気が流れる中、花織は風丸の声に再び視線を戻した。風丸を見るたび、どくんどくんと鼓動が早くなっていく。しかし、風丸に対する背徳感を感じた。言わなければいけない……、風丸の事が好きだと。そして彼の気持ちを傷つけたことにだって謝罪しなければならない。
沈黙の中、先に口を開いたのは風丸だった。
「あの……さ、俺やっぱり月島が好きだ。振られても、お前がどんなに俺のこと嫌ってても月島のこと好きなんだ。たとえ俺を見てなくても……、誰かの代わりでもいい。お前の傍にいさせてほしい」
風丸の真摯な言葉に花織の心は締め付けられるように痛くなる。私も好き――その言葉を楽に口にできればどれだけいいだろう。その言葉を花織が口にするためには1つの決心をせねばならなかった……鬼道を忘れること。一切彼を想わないこと……そんなことはできそうにないが。
しかしこれは最後のチャンスだ……言わなければきっと後悔する。あの日は言って後悔した。でも言わなかったらもっと後悔するだろう。花織は風丸を見つめる。
「私も好き、風丸くんのこと。多分、初めて一緒に走った時から好きだった。でもね……」
一瞬、言葉に詰まった。頭の中に鬼道の事が頭をよぎり、花織は自分に言い聞かせる、待っていても彼が私を好いてくれるわけじゃない。好きでいても叶うはずがない。そう思っているはずなのに、こんな大事な時に花織の中を支配するのは鬼道だけだった。
やはり風丸を選ぶことはできない。
傷つけるのが怖い。……傷つけられるのが怖い。