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恋風

第5章 エールを君に




「怪我……」

陸上をする花織にとって足の怪我というのは致命的なものだ。酷くなくても数日間は確実に走れない。多少のブランクでもそれが選手のバランスを崩してしまう。そして花織をそうさせた原因の一端に風丸のことがある。決して風丸にどうこうできる話ではなかったのだが……どこか風丸は罪悪感のようなものを感じた。それを察したのかマックスがその考えを否定する。

「それは風丸の責任じゃないよ。花織はね、自分の気持ちに踏ん切りをつけるためにあの場に行ったんだ。だから花織自身で一応選んだことなんだよ」

花織はバカだよね、そういってマックスはふっと笑った。しかし風丸の心はそう晴れない。その踏ん切りをつけなくてはならなくなった切っ掛けはやはり自分なのだ。今、先生から事情を聴かれているだろう花織を想うと風丸はきゅっと胸が締め付けられるように苦しくなった。

「俺は……」
「これを聞いて風丸がどうするのかは任せる。でもできるなら……、花織を支えてやってほしいと僕は思うよ」

いつもなら言わないような言葉を紡ぐマックスに風丸はああ、と返事をした。半田はまだ不機嫌そうにそっぽを向いている。

そのとき、音を立てて教室の戸が開いた。そこに立っていたのは秋とやはり短い髪の花織だった。マックスがふっと柔らかく微笑んで呟く。

「お姫様が来たね」

そしてすっと風丸の横をすり抜け、マックスは花織の元へと歩み寄った。彼はいつの間にか自分の鞄を持っていて帰る気満々だな、と風丸は思わず苦笑してしまった。

「風丸……」

小さく半田が風丸を呼んだ。その表情はどこか決心したようで真剣だった。

「なんだ?」
「花織を頼む。……アイツのことを好きならお前が一番アイツを、花織を理解してやってほしいんだ」

風丸はこの言葉を聞いて半田の花織に対する想いに気が付いた。だからだったのだ、花織の話をしている間、ずっと半田が不機嫌だったのは。そう思ってしまうと途端に風丸は半田に対して申し訳なさがこみ上げ来た、すまない。心の中でそう半田に謝罪する。声に出すのは余計に半田に失礼な気がした。
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