第1章 それはまさに
「俺は風丸一郎太。転校生の月島だよな。……放課後、女子の部室に案内するからここで待っててくれ」
先に沈黙を破ったのは風丸だった。風丸がとんとんと指先で机を叩きながらそういうと花織は頷く。たぶんこの教室で、という意味なのだろう。そして先ほどまでわからなかったが一郎太、という名前から察するに彼は男子のようだ。
「よろしくお願いします、風丸くん」
花織は風丸の目を見つめながら静かに頭を下げた。
***
放課後、花織は教室で風丸を待っていた。転校してきて初めての学校生活、秋が声をかけてくれるのでひとりにはならずに済んだ。アニメや漫画では転校生はよくクラスメイトに囲まれているがそんなことも無かった。
花織は窓の外を見つめる。帝国とは何もかもが違うこの学校。授業制度も進行具合もすべてが帝国に劣っている。……この雷門もかなりの進学校だというのは意外だったが。
「月島」
唐突にかけられた声に花織はびくりと肩を揺らす。振り向けば急いで来た様子の風丸が花織の方を見ていた。彼は掃除当番だったために花織を少し待たせることになってしまったらしい。
「すまない、待たせたな」
「いいえ、こちらこそわざわざごめんなさい」
花織が申し訳なさそうに眉根を寄せる。
「気にするなよ、どうせ円堂が強引に俺を呼んだんだろ?……それより、早く行こうぜ」
風丸はふっと微笑みを浮かべながら髪を揺らす。こうやって見ていると女の子には見えなかった。花織は”はい”と頷いて部室と足を進める風丸の後へついて行った。
雷門中学の昇降口を出て右に進むとそこは部室棟が立ち並んでいる。並んでいるその建物の左側を指さして風丸は花織を見た。
「あれが女子の部室だからな。……ここから俺はついていってやれないけど大丈夫か?」
心配そうに風丸が花織に問いかける。花織は頷きながら、彼はとても親切な人のようだと思った。