第4章 過去の面影
去年のことだった。帝国学園、学業とサッカーに力を入れている名門校。花織がこの学校に入学できたのはほとんど偶然だった。特に帝国学園を志望した理由もなかったがとにかく花織は帝国学園の生徒となった。しかし、成績は下の中、消極的でクラスからも教師からも印象は薄かった。
この学校ではサッカーがすべて。他の部活はあるようで無いに等しかった。しかし花織はそれでも陸上を志望し陸上部としての活動をしていたのだ。授業が終わり花織は共有グラウンドへの道を急ぐ。授業の進む速さに翻弄されすっかり疲れ切っていたが、やっと思い切り走れるのだと思うとわくわくと逸る気持ちが止まらない。
花織は少しでも早くグラウンドへ向かうべく、一般生徒が通ることの許されない通路へと足を踏み入れた。普段は通らないサッカー部のフィールドがある道を。
誰にも見つからないよう身を潜めながら共有グラウンドへ向かう。そんなとき、どこからともなく1つのサッカーボールが花織の足元へと転がってきた。花織はサッカーボールを足で止め、拾い上げる。目の端に赤いマントが翻った。
「え……?」
赤いマントに特徴的なゴーグル、そしてドレッドヘア。花織の目の前に立つ少年はとても個性的な容姿をしていた。
「こんなところで何をしている」
「……鬼道さん」
花織は彼の名を呟く。帝国学園に対して無関心な花織でも彼のことは知っていた。彼の名は鬼道有人。帝国学園の1年生主席、そして1年生ながらに帝国サッカー部のキャプテンだった。このサッカー部を中心に回っている学校では鬼道有人は花織のような一般生徒が話しかけられることは許されていなかった。本当なら鬼道さんではなく、鬼道様、と呼ばなければならないくらいだ。
「ここは、一般生徒は通れないはずだが」
鬼道が厳しい声で花織を見る。しかし花織は全く怯むことなくあっけらかんと返答を返した。さらりと花織の黒髪が風に揺れる。