第19章 恋風の行方
花織の問いに風丸は返事をしなかった。風丸は迷っていたのだ、このまま花織の話を聞いてしまうとプレーに悪影響を及ぼすような感情が生まれるのではないだろうか。そんなことを思っていた。しかし彼の胸の内では半田に言われた言葉が反芻する。
"拒絶しないで花織の話を聞いてやってほしい、花織のことをまだ好きでいるなら"
「……」
風丸は何も言わなかったが、微かにポニーテールが揺れた。彼が首を縦に振ったからだ。ともかく話は聞いて貰えるようだ。そう判断した花織は大きく深呼吸をして静かな声で話を切り出した。
「この大会で優勝して、何もかもすべてが終わったら……一郎太くんに話したいことがあるの。一郎太くんはもう私の話なんて聞きたくないかもしれないけれど、私が雷門へ来てから悩んできた、ずっと一郎太くんを振り回してきたこの気持ちの話……。今まで悩んでばかりで何も決められなかった私が出した答えを、最後でいいから一郎太くんに聞いてほしい」
控え室には静寂が佇んでいる。風丸はやはり何も答えようとはしない。どこからかくる胸苦しさから花織は大きく息を吸う。緊張で胸がドキドキと高鳴った。
「でも……、でもまずは私の話なんて忘れてていいから試合にだけ集中しててほしい。まず何よりも大事なのは、これまでの練習の成果が試される決勝戦だから。……私、今までずっと一郎太くんの頑張りを見てきたよ、誰のプレーよりも一郎太くんのプレーを信じてる。だから……」
花織は凛とした声を控え室内に響かせる。
「私は何もできないけど、せめて応援してる。一郎太くんが全力を発揮できるように祈ってるから」