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恋風

第19章 恋風の行方




「そんなわけないだろ。……花織は伊賀島戦前に迷うことなく陸上をやめたんだ。俺と花織にとって陸上のフィールドは、サッカーのフィールドと違って隣に立つことができる場所だった。……それに花織は速さを極める必要はないっていったんだ。陸上をしていた時は俺といつもどうすればタイムが縮まるのか試行錯誤してたのに……。これは花織が俺じゃなくて、鬼道の居るサッカーを選んだってことじゃないのか?」

えっ、と半田が驚きの声を上げた。風丸はもしかして知らないのか、花織が今まで速さを求めていた理由。誰よりも速くある必要があった理由や、陸上をやめた理由を。

「……違うぞ、風丸」
「え……?」
「花織が陸上をやめたのは、鬼道の目に留まる必要がなくなったからだ」

風丸は絶句した。目を大きく見開いて半田を凝視する。さらりと風丸の長い髪が揺れた。

「花織、お前がまだサッカーか陸上で悩んでるときに言ってたんだ。陸上は、鬼道が好いてくれるから速くなりたいって思ってたんだって……。いわば陸上って、花織と鬼道の始まりみたいなもんだろ。……もう鬼道の目に留まる必要はないからやめるんだって」
「……」

なんで、いまさらそんなことを言うんだ。

風丸は動揺に唇を噛んだ。今思えば半田の言うとおりだ、こんなこと話し合っていればすぐに明らかになっていただろうに。こんなふうに小さく積もって行ったすれ違いが風丸に思い込ませていた。

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