第19章 恋風の行方
「まずは自分にできることをしようって思いました。自分だってチームの一員なんだから、いつまでも引きずってちゃダメなんだって。まずは雷門中のフットボールフロンティア優勝を応援しなくちゃいけないんだって。やっと周りが見えるようになったから、気づきました」
「花織……、お前」
「だから私もがんばりますね。皆が気持ちよく練習できて、無事にフットボールフロンティアで優勝できるように」
鬼道は何も言うことができなかった。花織の言葉から察せられる何かが鬼道の胸の中で引っかかるのだ。だがそれがいったい何なのかは鬼道自身わかっていない。花織が言いたい真意がその中に含まれているはずなのに、鬼道はその言葉を見つけることがどうしてかできなかった。
「ところで鬼道さん」
「……?どうした」
「鬼道さんって包丁の扱いもお上手なんですね。お料理なさるんですか?」
唐突に全く違う話を花織が切り出す。花織は鬼道に先ほどの話題に付いて有無を言わせないつもりだった。鬼道は一瞬呆気にとられたが、ああと返事をして花織の問いに答えた。
「別に料理などはしないが……。帝国に居た時に調理の授業があっただろう。一年のカリキュラムに組み込まれているのだからお前も経験しているはずだが」
「あ、そういえばそうでしたね。でもあの短い時間でそれだけこの手慣れた包丁捌きができるなんて……、凄いですよ」
帝国での調理の授業はあまり時間数があまり多い方ではない。それなのに鬼道は危なげなく包丁を使えている。やはり彼はそれだけ器用なのだろう。他のメンバーはぎこちなく包丁を扱っているから余計に上手に見える。花織はくす、と笑い、感心した様子で鬼道の手さばきを見る。
「さすが鬼道さんですね」
「褒めても何も出ないぞ」
花織の褒め殺しの言葉に鬼道が肩を竦め呆れたように言った。こんな会話をできるようになったのは本当にこの頃になってからだ。帝国に居た時は花織がこんなに馴れ馴れしく話をできることは無かった。褒め殺しにする、という点は違わないが、基本的に対等に話ができるということがなかった。そして雷門に来てからは色々ゴタゴタしていたからまともに話ができることもなかった。逆にこの二人の関係は一度友人に戻ったことが、ある意味良かったのかもしれない。