第18章 君を想う
"またこうやって私が何か作ったら、食べてくれる?"
「……」
風丸はしばらく黙っていた。長い沈黙の後、秋の手からおにぎりを受け取ると秋に背を向ける。風丸が花織の握ったおにぎりを手にしてくれたという事実に、秋の表情は綻ぶ。風丸は秋に背を向けたまま、小さく秋に告げた。
「すまない、今回だけは貰うぞ」
「うん……!」
秋は大きく頷いてぱっと顔を輝かせると、みんなの元へ戻っていった。きっと風丸に気を遣ったのだろう。風丸は秋に手渡されたおにぎりのラップを外しておにぎりを頬張る。おにぎりの味に大差などないが、花織が握ったというこのおにぎりは確かに以前花織が握って持ってきてくれたものと同じ味がした。
花織。
中々それを飲み込むことができない、胸がつかえた気分だ。ようやくおにぎりを飲み込んで、風丸は再び花織を振り返った。やはり彼女は楽しそうに笑っている、その表情はやはり彼が愛した彼女の物だ。風丸はその表情に悲しげに微笑む。
どんなに虚勢を張っても、拒絶をしてみても。花織の存在は風丸の中では薄れもしない。それどころか、彼女に対する独占欲が酷く増幅するばかりだ。風丸は目を細める。自分の髪が風に乱されるのも気にも留めず、風に靡く髪を押さえている花織をただ見つめて切ない思いを彼は感じていた。
――――やっぱり、どうやったってお前のことが好きだよ。
今更、口に出すことなど出来ない想いだった。