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恋風

第18章 君を想う




花織の想いを成就させるため、花織に嫌われようとしているのに。それを自分の心は受け止めきれていなくて妙にムシャクシャした。サッカーに集中している間は気は紛れる。だが、フィールドを出るとすぐこれだ。花織と別れた時はあんなに自分の気持ちの整理ができていたつもりなのに、今どうしてこんなに苦しいのだろう。

「花織、これ貰うよ」
「俺も」

今度は一之瀬と土門だ。この頃、花織と妙に仲の良い二人。

「あれ、一之瀬くん。秋ちゃんのおにぎりはあっちだけど……」
「秋のは美味しいってわかってるからね。最後に食べるつもりさ」
「えっ、それってどういう意味……?」

意地悪、なんて笑いながら花織がふたりにおにぎりを差し出している。風丸は不機嫌そうに顔を顰めた。ああやっぱりイライラする。

マネージャーそれぞれの前に、各々が握ったおにぎりが置かれている。それは選手たちにも一目でわかった。だから鬼道は花織か音無のところにしか向かわないし、秋のところは一番美味しそうに見えるから無くなる速さが尋常じゃない。逆に夏未のところは余り気味だったり……、と様々だ。だからこそ余計に風丸は苛立っているのかもしれない。

「風丸くん」

険しい顔をしている最中、ふと名前を呼ばれて風丸は振り返った。彼の名前を呼んだ張本人、秋は風丸を見つめて手招きをしている。何か用だろうか、風丸は首を傾げて秋の元へ歩み寄る。さらさらと青い髪が風に揺れた。

「どうした木野、俺に何か用か?」
「風丸くん、これなんだけど……」

ひょい、と秋が差し出したのはおにぎりだった。ラップに包まれたものがふたつ秋の掌に載せられている。風丸はますます首を傾げた。秋の行動が不可解だったからだ。風丸はおにぎりを食べていないわけでもないし、特に秋と仲が良いわけではない。もちろん花織のことを任せた人物であるという点では秋のことを信用しているが、それ以上でも以下でもなかった。

「円堂に渡したら喜ぶんじゃないか?」

単純に秋が握ったおにぎりだと思った風丸は素直な言葉を口にした。途端に秋は顔を真っ赤にしてそうじゃないの!と首を振った。そしてわざとらしく咳払いをすると風丸をじっと見つめる。
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