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恋風

第18章 君を想う


***

花織、今日は良く笑ってるな……。

風丸はマネージャーが作ったおにぎりを頬張りながらそんなことを考えていた。もぐもぐと口を動かしながらも視線だけは花織に向けられている。彼は少なからずというか、かなり、昨日自分が花織に仕向けた仕打ちを気にしていた。

花織のあんな顔を見たのは二度目だ。一度目は花織に別れを告げた時、衝撃と同時に酷く傷ついた顔をしていたのは記憶に新しい。自分の好きな彼女にそんな顔をさせてしまったことに対して風丸はずっと自分に言い訳しつつ、申し訳なく思っていたのだが……。

どうしてか花織は笑っている。いつもよりも溌剌として、以前風丸の傍にいた時と同じように笑うのだ。それは今まで見せていたどことなく寂しげな微笑じゃない。風丸は胸が締め付けられるように痛むのを感じた。

自分の言葉に彼女が傷ついていないのであれば、それほど最良のことは無い。だが、自分の言葉は彼女を気を引くほどの価値も無くなってしまったような気がして無性に寂しくなった。そう思われても完全に自業自得だ、自分が花織に嫌われようとしていたのだから彼女がどう思ったって仕方の無いはずだ。分かっているのに胸の内ではモヤモヤとした感情がこみ上げてくる。

「花織、貰ってもいいか?」
「はい。どうぞ鬼道さん」

視線の先では鬼道が花織の握ったおにぎりを花織から受け取っている。他のチームメイトも同じことをしているのになぜかそれだけで不満な気持ちになってしまう。いちいち了承を取らなくてもいいじゃないか、そんなどうでもいいことを思った。先日までは二人が上手くいけばそれでいいと思っていたのに、花織の心境の変化を目の当たりにするとそれすらも嫉妬の対象となるようだ。
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