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恋風

第18章 君を想う




「……もうそろそろ戻ろう。選手のみんながお腹すかせて待ってるよ」

花織がそう微笑んで水道の蛇口を捻り、石鹸で手を洗った。三人も続いて手を洗う。相当量のおにぎりが出来上がった。一人当たり25個程度握ったのだから、総計は100個になるだろうか。だが、選手たちに掛かれば造作もない量だろう。エプロンを脱いで、おにぎりを運ぶ準備を進める。ふと、花織はその時彼女たちに言わなければならないことを思いだした。

「秋ちゃん、春奈ちゃん、夏未さん」

自分の作ったおにぎりを乗せた盆を持って、一番に外へ出ようとしていた花織が三人を振り返る。

「さっき私が言ったこと、内緒にしておいてくれないかな……?一郎太くんや鬼道さんはもちろん、ほかのみんなにも」
「え?」
「どうしてですか?」

不思議そうに春奈と夏未が首を傾げる。鬼道や風丸はともかく、他の人には言ってよいのではないかと思ったようだ、特に春奈は。その方がいろいろ、安堵する人間もいるからだ。花織はふっと笑う。

「きっと今、事が知れてしまうとチームにとって悪い意味で影響が出ると思う。今は大切な決勝戦の前だからまだ黙っていてほしいの」
「うん、私もその方がいいと思うな」

花織の提案に秋が同調する。納得が言った春奈と夏未は頷き、了承の意を示した。花織はよろしくね、と言って部室を後にする。春奈と夏未も、花織の後に続いた。しかし、秋だけはそこに立ち尽くしていた。

部室に一人残った彼女は、ちらりと傍に在ったサランラップに目を向ける。そしてそれを小脇に抱え、おにぎりの盆を持つと急いで部室を飛び出した。

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