第18章 君を想う
「彼にとっては迷惑だって分かってる。……でも私は、別れたって一郎太くんが好きだよ。やっとわかったの、私自身が今一番大切に想ってるのが誰なのか」
「月島さん……」
夏未が思わず花織の名を呟いた。花織と夏未はあまり話すことは今までなかった。傍観が主である夏未と、実践派の花織では中々話が合わないし何よりあまり気が合わなかったのだ。だが夏未は今単純に花織の言葉に感心していた。
何といっても夏未も恋する乙女である。想いを寄せる人への感情を何となく隠している。だからこそ、堂々とこの場で言ってのける花織を単純にいろんな意味で凄いと思っていたのだ。
「花織、先輩……。やっぱりお兄ちゃんのことは……」
しんと静まり返った部室で次いで春奈の声がする。春奈の声は花織の言葉に喜びを感じつつも、どこか寂しげな色を滲ませていた。それは彼女の言葉にも現れている。花織は春奈の言葉にふっと悲しげに目を伏せた。
「鬼道さんのことは……、帝国に居た時からずっと好きだった。ずっと思い焦がれていたし、何より憧れの人だった。それは今でも変わらない、でもね……」
花織がさらりと髪を揺らす。その表情は毅然としていて、もはや鬼道の名前に揺らぎはしなかった。
「今、私が誰より好きだと宣言できるのは一郎太くんだけ。……鬼道さんを嫌いになったわけじゃなく、ただ……。ただ、一郎太くんが私は好きなの」
「花織先輩……」
納得したような、していないような。複雑な表情で春奈は花織を見つめた。だが、春奈の中ではこんなふうな自己解釈が進められる。"嫌われてないってことは、見込みがあるんじゃないかな"口にはしないが春奈は心の中で呟く。がんばれ、お兄ちゃん。