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恋風

第18章 君を想う




「花織ちゃん」

花織が一心におにぎりを握っていると横から秋が声を掛けた。秋は慣れた手つきでおにぎりを握りながら花織を見つめていた。

「どうしたの、秋ちゃん」
「ううん、何でもないんだけど。ただ……さっきからずっと黙ってるから、どうしたのかなあって」

彼女はどうやら心配してくれていたらしい。少しだけ眉根を潜めながら花織に問うた。花織はくす、と笑って手の中にあるおにぎりを見つめる。

「気持ちを込めてたんだ、ずっと」
「気持ち……?」
「うん。皆の練習が上手くいったらいいなあ、とか。これ食べて頑張ってくれたらいいなあとか……」

ぎゅっと形が崩れない様に力を込めて握り、花織は盆の上に綺麗な三角形に出来上がったおにぎりを乗せた。そしておにぎりを見つめながらふっと、目を細めて花織が呟く。

「一郎太君が、食べてくれたらいいな、とか……」
「えっ?」

花織が零した言葉に秋は驚いた。目を大きく見開いて、花織を凝視している。花織は柔らかい、ここの所ずっと見られなかった穏やかな微笑を浮かべて秋の目を見た。もう彼女の目は迷いなどない。

「秋ちゃん。私、やっとはっきりできたよ」
「花織ちゃん……」

花織は凛とした様子で、自分の意思を述べる。

「私、どうやったってやっぱり一郎太くんが好き」

その言葉は狭い部室内にしっかりと響いた。わいわいと騒いでいた春奈もそれに呆れた様子で付き合っていた夏未も作業をやめ、花織を見る。それでも花織は言葉をつづけた。
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