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恋風

第18章 君を想う




花織は完全に以前の毅然とした様子を取り戻していた。もう空元気などではない、自分の気持ちを自覚できたからこそ、彼女はもう凛とした態度で彼らの練習のサポートに臨むことができた。そんな花織の様子をある者は安堵し、あるものは怪訝に思い、あるものは切なさを感じていた。

しかし選手たちも、マネージャーの一喜一憂にかかずらっている暇などない。もうフットボールフロンティアの決勝戦が近いのだ。皆、練習の一時を大切にまた怖いくらいの気迫で懸命に行っている。マネージャーたちはそんな彼らに対して何もできないことをもどかしく感じていた。彼らに私たちがいったい何をしてあげられるだろう……。考えた末の答えが今であった。

選手たちにおにぎりの差し入れをする。春奈と秋の提案だ。炊飯器二つ分、一杯一杯に炊いたご飯を手にとり、一つずつ形にしていく。初めは夏未がご飯を飛び散らせたりとどうなることかと思ったが、順調におにぎりが出来上がってきている。

花織は再び炊飯器からご飯を掬って、もういくつ目になったか分からないおにぎりを握り始める。ご飯は火傷しそうなほど熱々だったが全くもって気にならなかった。他の三人が楽しそうに雑談しながらおにぎりを握る間も、花織はひたすらに黙っておにぎりを握り続けていた。

花織はあのときのこと、数週間前彼の為にこうしておにぎりを握ったことを思いだしていた。あの時は苦でなく、彼が喜んでくれればいいなとそれだけを思っておにぎりを握った。今もそうだ、じいっと手元を見つめて花織は思う。彼がこのおにぎりをまた手に取ってくれればいいな、口にしてくれればいいな。きっと望んでも仕方がないことだが、そう考えるだけでより一層心が籠る気がした。
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