第18章 君を想う
「……練習に戻って……っ」
選手たちにこんな情けない涙を見せないためにここへ来たのだ。ふたりが花織を心配してきてしまったのなら全く持って意味がない。花織は涙声で訴える、だが土門はともかく、一之瀬は引かなかった。
「戻るときは君も一緒だよ。だから早く泣き止まないと」
「……無理」
ふと、思考が途切れた時に先ほどの出来事がフラッシュバックして涙があふれ出してしまう。それはどうにも止めがたくて花織は首を振った。本当なら一刻も早く練習に戻って何事もなかったかのように振る舞わなくてはいけないのに。今の花織にはそれができなかった。
「……目障りだから、きっと」
「風丸のこと?でも風丸は本心はそう思ってるわけじゃないと思うよ」
一之瀬が厳しい声で言う。おいおい、と土門がそれを止めた。土門は事の顛末を事細かに知っている。対して、一之瀬は最近転校してきたのだから、花織に対しては彼女が風丸を好いている、ということしかしらない。他のことに関しては風丸が普段どんな目で花織を見ているか、なども知っているだろうが。無遠慮に花織のことを責めるのも仕方のないことかもしれなかった。だからこそ、土門がそれを制する。
「一之瀬、その辺にはあんまり触れてやんなって……」
「え?ふたりって、もしかして何かあったの?」
きょとんとした表情で一之瀬が土門を見上げる。土門は花織をちらりと見て無言で何度も首を縦に振った。一之瀬はそうか、と言って花織に視線を戻す。