第18章 君を想う
花織がタオルを差し出せば、ふたりもきちんと受け取ってくれる。花織がふっと微笑めば、鬼道も微笑を返してくれた。
「頑張っているな、お前も」
「ありがとうございます、鬼道さん」
些細な言葉であってもやはりそれが嬉しくて花織は鬼道に会釈して、次にやってきた一之瀬、土門にそれを配る。そして足が止まった。彼が、上がってきたからだ。長い髪を揺らして、宍戸と談笑しながらこちらへ向かってきている。ここの所、ずっと話をしていない。
……普通に声を掛ければ迷惑だろう。でも、タオルを渡すだけだ。あと二枚なのだから、彼らだけに渡さないというわけにもいかないだろう。私は、マネージャーとして当然のことをするだけで。妙な緊張を押さえながら花織は二人の元へ歩み寄る。花織の瞳に彼が映る。花織が自分に歩み寄って、自分に声を掛けようとしているのが分かったのか、彼もちらりと花織を一瞥した。
「……いちろ」
それは一瞬の出来事だった。風は静かに花織の横を吹き抜けて行った。
「木野!タオル貰えないか?」
花織の目が大きく見開かれる。風丸さん!と宍戸が慌てて風丸が追っていくのを花織は呆然と見ていた。一瞬、何が起こったのかよくわからなかったが、花織はすぐにそれを察した。風丸は花織を一瞥しただけで、目を合わせようとはしなかったのだから。