第18章 君を想う
「そっか。……花織ちゃんらしいね、風丸くんの相手になりたいからって言ってた花織ちゃんらしい」
「あれは……、自分のためだから。私が、彼と走りたかっただけで……」
花織が彼からあからさまに視線を逸らした。秋はふっと困り顔で微笑む。花織の中でちゃんとこの件に関してやはり答えが出ているのだと実感した。ただそれを花織が認められないだけなのだ。いろいろな周りからの威圧と、彼らへの負い目などのせいで。
「花織ちゃん、本当はもう答えが出てるんじゃない?……花織ちゃんが誰を好いているのか」
「……私は」
「あ、そろそろ休憩だね」
秋が時計を見て話を切り替える。秋は首から下げたホイッスルを吹き鳴らし、甲高い笛の音をフィールド全体に響き渡らせた。その笛の音にボールを追いかけていた選手たちの足が止まる。花織はドリンクやタオルの準備を始めた。
「はい、花織ちゃんはタオル配って。春奈ちゃんはドリンクを。私は、貰い損ねた人の為に構えてるから」
秋が指示をだし、マネージャーの仕事を振り分ける。花織と春奈は頷いてそれぞれの荷物を抱えた。今日は理事長の見舞いの為に夏未はいない。まあもともと3人もマネージャーがいれば活動自体に支障はない為問題はなかった。
花織は先ほど畳んでいたタオルとは別の洗濯をしてある真っ白なタオルを腕に下げ、選手に配り始めた。選手はハードな練習のせいでみんな汗だくだ。きちんと汗を拭いておかないと身体を冷やしてしまう。
「どうぞ、染岡君。お疲れ様」
「おう、サンキュ」
「影野くん、頑張ってるね。はい、タオル」
「……ありがとう」
花織はフィールドのラインぎりぎりに立ち、出てくる選手たち一人一人に声を掛けながらタオルを手渡す。こういう声掛けも大事だと花織は常日頃から思っている。選手のモチベーションが褒められることで保たれるのなら、また何か悩みがある場合声を掛ければすぐにわかるのだから、やらない手はないと思う。何より、声掛け一つできなくてマネージャー業は務まらないだろう。
「お疲れ様です、豪炎寺君、鬼道さん」
「ああ、ありがとう」
「悪いな」