第18章 君を想う
好意と、信頼と、尊敬とそういった正の感情の中に埋もれる彼への負の感情。自分の心は落ち着いているようだがめちゃくちゃだ。鬼道とこのまま本当に友好関係を築き、いつか答えを出せるのか。彼の傍にいるとやはりよくわからなくなってしまう。複雑でどう対応していいかわからないから、先ほどの彼の高圧的な自分を束縛するような態度が妙な反抗心を花織の中で生んでしまった。
「もしもお前がまだわからないというなら――――、俺が分からせてやろうか?」
背筋に電流が走るほど艶めいた声が花織の耳元で囁く。鬼道有人という人間は本当にズルい、彼自身もそれは自覚していた。
……友人としてなど、心から思えるものか。
上辺では確かにそう言い、花織の前ではそう取り繕った。だが本心はそうではない、彼女に友人としてなど想ってほしくはなかった。異性として、男として……彼女が意識することを彼は腹の中では望んでいる。だから今の状況のような、無防備で隙だらけの彼女に対して過剰な、それでいて親切と思わせるような行動をとるのだ。
「……ごめんなさい、鬼道さん」
「分かればいい。……俺も悪かった。お前に理解させるためとはいえ、怖い目をみさせて」
花織が項垂れて謝罪の言葉を口にすれば、鬼道もそっと花織の腕を拘束する手を緩めた。鬼道の力によってうっすらと赤くなってしまった彼女の腕を鬼道が優しく摩る。
「ただ俺はお前が心配でな。……無理のない練習なら俺も何も言わない。それに」
「……?」
鬼道が花織に微笑みかける。そして少しだけ気障で、それでも彼の本心とも取れる言葉を口にした。
「どんな場所に居ようとも、俺がお前を守る。必ず、な」
「……っ」