第18章 君を想う
時刻は20時前、確かに女子中学生が1人で帰るにはあまりよろしくない時間帯だ。だがそれでも花織は引こうとしない、もちろんそれは鬼道も同じだ。
「花織」
「……っ、いたっ」
鬼道が花織の名を呼んで素早く花織の身体を壁に押し付ける。花織は突然のことに驚き、ぞくりと背筋に冷たいものが走った。一瞬、あの夜道での出来事を思い出す。抵抗もできずに彼のされるがままだった。それでも嫌悪感を感じないのはやはり花織が彼に対して特別な感情を抱いているからだろうか。
鬼道は花織の両腕を拘束して自らの顔をじっと彼女に寄せる。花織は彼との顔の近さにどぎまぎして、声にならない声を上げた。だがそれでも鬼道はスタンスを崩さない。
「少しは考えろ。中学生の俺の手さえ、お前は振り払えない。……そんなお前が夜道で、しかもお前が臆する細い路地でお前を狙うような変質者に出会ったらどう対処する?相手は男の、しかも大人だ。……もしかしたら影山の手下かもしれない」
花織は鬼道の言葉にハッとする。というかわかっていたはずだ。鬼道がいつも自分の身を案じてくれて、花織の為に動いているのだということを。現に今だってそうだ。他の部員などきっと一人も残っていない。それなのに、彼は花織に忠告するためにこの場に残っていた。
「……」
「わかっているだろう?お前のような魅力的な女が歩いていれば、妙な事を考える輩が出てもおかしくはない。俺はお前の身を案じて言っている」
鬼道の言うことすべてに同意はできないが、花織はもちろん彼の言いたいことは分かっている。夜道がどれだけ怖くて危険なのかだってわかっている。……ただ、少し鬼道に反発してみたかったのだ。