第3章 淡く、そして儚く
上滑りに時間が過ぎてゆき、すぐに放課後の部活の時間がやってきた。いつになくぼんやりとなんとなく練習をこなしていく。半田のいった言葉がどうしてか気にかかっていた。“それでも、花織は風丸の事”あれはどういう意味だろうか。考えていてもあまりはっきりしなかった。
花織は気持ちを切り替えようと男子陸上部の方へと歩を進める。女子陸上の練習はいつも17時30分で終了してしまう。それ以降は男子に交じって練習するのが花織のこの頃の習慣だった。相変わらず花織と女子陸上部の部員たちは折り合いが悪く、未だ先輩たちの花織に対する態度は冷たかった。
自分たちのコロニーに入られたのも気にいらないのだろうが、理由としてもう1つは花織が男子陸上部……いや、風丸と仲良くするからだろうと花織はおもっていた。キャプテンは明らかに風丸に対して好意を抱いていた。それでも先輩を気遣う気もなく、花織は風丸に声を掛ける。
「風丸くん!今日も一緒に走らない?」
休憩を取っていた風丸は花織の声に振り返ると、花織を見てさっと顔を赤らめる。そしてそのまま花織から視線をそらした。そんな風丸の行動に花織は不安な気持ちでいっぱいになる。嫌われているのではないだろうか……最近、目も合わせてくれない。でもそうならそうだとはっきり言ってほしい。
よきライバルになれるのだと、勝手に期待して勝手に絶望するなんて、そんなことは絶対にしたくないから。
「ああ、じゃあ行こうぜ」
そう言い放ってさっさと行こうとする風丸を花織は大声で呼び止める。
「風丸くん!!」
「どうかしたのか?」
驚いて振り返り、花織を凝視する風丸。彼は久しぶりに花織と目を合せたのだが、今はそんなことは問題じゃなくなっていた。明日になればマックスや半田がこの気持ちを解説してくれるかもしれない。でもそんなものをもう待てなかった。花織の思考は完全にこの胸を締め付けるような苦しさを解消したい、それだけだった。
「風丸くん……、私のこと嫌いなの?」