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恋風

第17章 優しい嘘




「お前の気持ちを焦って求めすぎていた。……軽率な事だった」
「そんな、鬼道さんは何も」

花織が首を振る。

「いや、風丸にあの決断をさせたのは俺の過去の挑発のせいだ。……すまない。またお前を傷つけることになってしまって」
「いいえっ!……悪いのは私です。私が優柔不断で彼を傷つけてしまったから。……あの時もそうだったのに鬼道さんに当たってしまった。ごめんなさい、あんな酷いこと……」

言っているうちに涙がこみ上げそうになったのか、花織が肩を震わせて俯く。彼にも鬼道に対してもこの件は申し訳ないとしか言えなかった。鬼道は花織へと歩み寄り、宥めるように花織の肩を叩く。

「気にするな。……俺がお前に以前言った言葉はもっと冷たく残酷だった。……花織」

鬼道の右手が花織の左頬に添えられる。花織がゆっくりと鬼道を見上げれば、ゴーグル越しに鬼道が微笑を浮かべたのがわかった。

「俺はもう、お前に気持ちを要求する気はない。そうするとお前を苦しめることになるようだからな。……お前が決めろ。俺の今までの経緯、周囲の偏見を気にする必要はない。固定概念や同情の無いお前の素直な答えが欲しい。……お前の答えが出るまで、俺はずっと待つつもりだ。異性としてではなく、せめて友人としてな。避けられるのは真っ平ごめんだ」
「……す、すみません」

言葉の最後に零した意地悪な笑みに花織は思わず頭を下げ、謝った。だが、気分がかなり軽くなったのは事実だ。一之瀬に言われた言葉をまさか鬼道に後押しされるとは思わなかった。

「あの鬼道さん……、こんなことになってもまだ私のことを好きだと仰るんですか?」

聞いてはいけないだろう、と思いながらも花織が問いかける。失礼な話だとは分かっている。だが心の底から気になったのだ。これだけ酷いことをしているのに鬼道が愛想をどうして尽かさないのだろうと。

「ああ、……1年前から好きだったんだ。そう簡単に違えるのならば、お前もここまで苦労しなかっただろう?そういうことだ」

そういって苦笑する鬼道の微笑はどうしようもなく哀愁を感じさせた。

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