第17章 優しい嘘
「こ、こんにちは……。雷門中学の月島です」
「知ってるぞ。元々帝国に居ただろう」
不安げな表情を浮かべている花織に源田が優しく声を掛ける。自分を知っているということに花織はハッとしたが、鬼道の側近だった2人なのだから知っていても無理はないと思った。
「だが、鬼道が月島を連れて来るとは驚いた。……いつの間に仲良くなったんだ?鬼道」
ニヤッと中学生らしい、からかいの笑みを佐久間は浮かべる。鬼道は誤魔化すように窓辺により佐久間と源田から顔を逸らした。
「……同じ学校だったら仲良くなりもするだろう。何のこともない」
"同じ学校"その言葉に鬼道は背を向けていた為気が付かなかったが、花織には佐久間と源田の顔が少し陰ったように見えた。
だがすぐに二人とも明るく、笑みを浮かべる。
「に、してもだ。1年の時はあんなに不器用なことをやってた鬼道がなあ」
「ああ。無意味に校内を巡回したり、用もないのに寺門の教室に押し掛けたり。……誰かさんをひと目見たいが為に、妙なことをやってたとは思えんな」
佐久間の茶化しに源田も加わって鬼道をからかう。鬼道はあからさまに咳払いをして二人を窘めた。
「……余計なことは言わなくてもいいだろう」
ある意味、花織にとって不思議な光景だった。帝国では鬼道が絶対君主のように見えていた。少なくとも日常の学校生活ではそうだった。だが、花織が遠く感じていた帝国サッカー部の彼らは、想像もしないほど仲が良く、中学生らしかった。
「はは、悪かった。そういうわけだ月島、鬼道のこと頼むぞ」
源田が大人びた表情で花織に言う。佐久間も源田に続いた。
「ああ。世宇子を倒してくれないと俺たち、腹の虫が治まらないからな」
佐久間がそう言いながら花織に手を差し出す。花織もそっと彼の手に自らの手を添えれば、佐久間はぎゅっと花織に握手をした。
「マネージャー、頑張ってくれ。頼むぞ」
「……はいっ!」
佐久間と源田も、きっと他の帝国の鬼道の仲間たちも本当にいい人たちなのだろう。鬼道が雷門に来た理由が少しだけ分かったような気がした。