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恋風

第17章 優しい嘘



***

鬼道が花織を連れてきたのは、雷門中学のすぐ近くにある大病院、イナズマ総合病院であった。あまりに気まずくて何も言葉を交わせず、何も聞かずにここに来たので鬼道が何をしたいのか花織には今までわからなかったのだが、ここに来てはっきりとした。

「鬼道さん……」
「佐久間と源田がまだ入院していてな。本当は土門を連れてこようと思ったんだが」

今日は一之瀬と話したいことがあるだろうから無理だと思ったらしい。

「でも……どうして私を?」
「アイツらも、同じ顔ばかり見ていては飽きるだろうからな」

ふっと鬼道が笑う。花織は佐久間・源田とはほとんど面識がないのだがそれでも連れてこようと思ったのか。花織がそう問う前に目的の場所についてしまった。四人部屋の病室の中を鬼道は少し覗き、中に入って行った。ネームプレートには佐久間と源田の名があった。恐る恐る花織も病室の中を覗き込む。

「よく毎日も来るな、鬼道。忙しいんじゃないのか、練習」
「フッ……、大丈夫だ。それより、お前たちの具合はどうなんだ」

ベッドに掛けたままの源田と佐久間の間に鬼道はいた。花織は完全に病室に入り損ねて外でどうしたらよいものかと戸惑うことしかできなかった。

「順調だ。今度の検査で異常がなかったら、退院の日取りを決めるらしい。……サッカーができるのはまだ先だけどな」
「そうか……」

世宇子戦で負った怪我が特にひどかったのはこの二人だ。ゴールキーパーと前線を指揮する参謀でフォワード。目立つ二人だったからこそ、余計に攻撃されてしまったのかもしれない。その時、困った様子で病室を覗き込む花織と病室の中の源田の目があった。はっと花織が居直る。

「鬼道、アイツは……」
「花織、突っ立ってないで入ってこい」

源田の言葉で花織がいまだ病室内に外にいると察したのか、鬼道が花織を振り返った。鬼道に呼ばれ花織は恐る恐る病室に踏み込む。佐久間も源田も花織の登場に多少は驚いたようだが、さほど意外そうではなかった。花織は気まずそうに2人に頭を下げる。
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