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恋風

第17章 優しい嘘




ひらりと手を振って花織はふたりから離れる春奈と夏未の座るベンチを超えて、一人フィールド端のベンチに腰かけた。そしてジャージのポケットから自分の手帳を取り出した。以前の手帳は鬼道がしばらく預かっていたから、雷門に来た時新調した新しい手帳だ。

中には自分が練習を見ていて気が付いた点をメモしてある。時々、選手の為になりそうならば指摘をしたりしてきた。最初は自分のプレーだった。帝国に居た時からずっとそうしてきた。以前のページを繰ろうとして花織はハッとする。結局、そのままページを見ないで辞めてしまった。

またぼうっと目に映る青色を追いかけている。得られるものはきっともう何も無いはずなのにやめられない。最早、これは彼女にとって日常でほとんど癖のようなものなのだろう。

「やあ」

急に声を掛けられて花織は彼から視線を移す。振り返ると秋と話していたはずの一之瀬が、先ほど秋に見せていたポーズで笑っていた。

「一之瀬くん……。秋ちゃんとお話してたんじゃないですか?」
「逃げられちゃった。円堂のことを話したからかな」

花織の隣に腰かけながら一之瀬が言った。え、と問い返して花織が一之瀬を見つめる。花織の驚いた表情に一之瀬は苦笑しながら頭を掻く。

「秋は円堂が好きなんだね」
「一之瀬くん……?あの」

いきなり何を言い出すのだろうこの人は。だが、それは確かに核心を突いていて、咄嗟に花織は否定できなかった。いったい何と答えればいいのやら、花織はしどろもどろになって取り繕おうとする。

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