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恋風

第17章 優しい嘘




彼は帝国にいた時、花織と交わした会話を思い出していた。彼女は特に長ズボンを好まない。走るときに裾がどうしても気になり、邪魔になるからだと言っていた。染み着いた習慣は中々取れないのだろう。雷門の試合を観戦したときもすべてハーフパンツスタイルのジャージだった。確かに風丸の話、そして急にそして無理に明るさを振る舞い始めたことを総合すると何かあったのかもしれないと鬼道も思う。

……にしても、この二人の花織に対する関心は異常とも言える。ふつうならそんなことに気がつく男がいるだろうか。

「だから、声を掛けてやってほしいと思ったんだが。……鬼道、本当に花織と揉めたのか?」
「ああ。誰かさんが公衆の面前で、俺に負けないくらいこっぴどく花織を振ったからな。花織はえらくショックを受けていた」

咎めるような口調で鬼道が言う。俺が花織に何をしたのか知っていたんだろうといいたげだった。このふたりはライバル同士だが、意思は一致している。花織が幸せであればいいというところだ。なのに、それを知っていて風丸があの選択をしたのが鬼道は少し気にくわなかった。

「そうか……」

切なげに風丸が呟くと鬼道は肩を竦めた。

「俺は別にお前が手を引かなくとも花織を俺のものにする気で居たんだがな、風丸。だが俺がいくら花織に対して独占感情を抱いていても、俺は花織の気持ちを無視してまで自分の気持ちを押し通す気はない」
「……どういう意味だ?」

呆れたような鬼道の言葉に風丸はムッと顔を顰めた。まるで風丸が花織の想いを無視したと言いたげな口調で、鬼道が言ったからだ。

「どういう意味かは自分で考えろ。……練習に戻るぞ」

ひらりとマントをたなびかせて鬼道はフィールドへ向かって歩き出す。風丸は先ほどの鬼道の言葉を思い返しながら、ベンチに座る花織を見てぎゅうと拳を握った。
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