第17章 優しい嘘
風丸の降伏の言葉に鬼道が鼻で笑う。風丸の行動は鬼道にとっては不可解なものでしかなかった。今も花織を目で追い、彼女に近寄る男に苛立ちを見せているくせに馬鹿馬鹿しいことをすると思った。
「……俺にも見込みがあるなら絶対に引かないさ。でも花織を、これ以上苦しめたくないからな。……俺が身を引けるうちに引いておきたいだけだ」
「その割には未練がましいじゃないか。片時も花織から目を離したくないんだろう?」
鬼道は風丸の矛盾を突いては笑う。そう、諦めた振りをして見せてもやはり誤魔化せないらしい。誤魔化す気もないが……。風丸はさも当たり前のように頷き、動じすらしなかった。
「花織は俺のものじゃないが、俺の気持ちは俺のものだ。花織を好きでいるのは自由だろ?……別れたのは確かだが、アイツを想うことくらいは許してくれ」
「許すも何も、お前が言ったとおりだろう。お前の気持ちはお前のものだ。花織の恋人でない俺に許可を求める必要はない」
鬼道は漸くからかう様な笑みをやめ、風丸の言葉に苦い笑いを見せた。風丸は何も言わなかった。ちらとフィールドにいる花織に視線を向けて話を変える。
「で、花織の話なんだが。……何か知らないか?」
「さあな。アイツは俺を避けているから知らないが……、どうして変だと思う」
風丸の心配の根拠を鬼道が問う。
「花織が屈むときの動作が気にかかるんだ。……俺には右足を庇っているように思える」
「なるほど……。そう言えば、今日は珍しくアイツは長袖のジャージを着用しているな。アイツは冬以外には滅多にそれを選ばないはずだが」
鬼道が顎に手をやり頷く。どうやら共感できるらしい。