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恋風

第17章 優しい嘘




「皆、こんな練習を軽々こなしてるんだね。すごいなあ……」
「すごいなあ、じゃないよ!どうして私に話してくれなかったの!?土門くんにも本当は帰らせるつもりだったんでしょう!もし花織ちゃんが怪我をして自力で動けなくなったら、どうするつもりだったの!?」

秋が珍しく怒りを露わにして強い口調で花織に言う。花織は目を伏せ、小さく言葉を吐き出した。

「言いたくなかった……、話したら全部本音が零れそうで。……私、また逃げだそうとしてたから」
「「え?」」

思いにもよらない花織の言葉に秋と土門が疑問符を浮かべた。逃げる?秋は首を傾げる。花織は目をゆっくりとあける。そして土門と秋の表情を見て静かに話し始めた。

「私、自分のせいでチームの空気が乱れてるってわかってた。皆、腫物に触るみたいに私に話しかけるし、目も合わせてくれない人もいたから。私自身もどうしても気持ちを上げきれなくて皆の士気を下げてばっかり。……情けないよ、もうすぐ準決勝が控えてるのに。だから、身体に負荷をかけて何も考えられなくなりたかった。……辛いことも、悲しいことも忘れてしまいたかった」

花織が目を再び伏せる。つうっと彼女の瞳から涙がこめかみのあたりを伝って落ちた。花織は自らの手で自分の顔を覆う。

「でも、忘れられたのは夢中になってる時だけ。……忘れられるはずないよ、一郎太くんのあんな顔。私のせいでどれだけ彼が辛い思いをしたのか……」

胸が張り裂けそうだ。風丸の言葉、表情、声色、瞳……思い出すだけでぽろぽろと涙が零れ落ちてしまう。しかも彼のプレーに支障が出ていないところを見ると、彼がずっと前から決心を付けていたのか。はたまた花織に愛想を尽かしたのかどちらかということが花織には分かっていた。どちらにしても風丸を苦しめたという事実は変わらない。

「それでも私、大好きなの……。いつも一緒だったから、彼が隣にいないだけで不安で寂しくて、苦しくなる」

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