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恋風

第17章 優しい嘘




「はぁ……っ、はっ、はあ……っ」

花織は全身の鈍い痛みを享受しながら胸いっぱいに酸素を吸い込む。修練場の床は冷たく、気持ちがいい。火照りきった身体を冷ましてくれるようだ。

数分前にようやくマシンが停止した。とてもハードだった、以前体験した時とは比べ物にならない。何も考えなくていいほどすべてが真っ白で、億劫で息を継ぎ走ることがすべてだった。花織は少し首を動かす、それですらだるくて仕方がない。

今から帰ることを考えると嫌になるが、頭はすっきりとしていて爽やかだった。マシンの動きはハードで怪我も多少はしたものの、全くついていけないわけではなかったし実行して良かったといえるだろう。花織は大の字に手足を伸ばす。疲れだけが身体を支配する今が、とてもここ数日の中で一番快適だった。息をすることしか考えなくていい。

「花織ちゃん!!」

心地よい疲労感に花織が目を伏せていると突然声がかかった。花織は驚きに飛び上がる。ぼろぼろの身体をおして、上半身を持ち上げる。修練場の入り口から土門と救急箱を抱えた秋が焦った様子でこちらへ駆けてきていた。

「な、何で……ここに」

花織が寝転がったまま、脇へ座り込んだ秋に問いかけた。秋には土門と帰るから先に帰れと言って何も言わなかったし、土門にももちろん帰れといった。なのにどうして彼らはここに居るのだろう。花織が驚愕していると秋が少し怒ったような口調で花織の身体に触れた。

「土門くんから教えてもらったの!それにしても、どうしてこんな無茶をしたの?」
「練習したかっただけだよ……。鈍ってたのかな……、無茶したつもりはないんだけど」

あまり抑揚のない声で花織が呟く。彼女はあまりそれを気にしていないようだが、花織の身体はぼろぼろで腕や足には擦り傷、片膝からは流血もしている。

「あー……、それは俺のせい。ごめん、俺らの練習の設定のままだったんだ」

頭を掻きながら、土門が申し訳なさそうに言う。花織はそう、と頷いて天井を見上げた。いくつもの電燈が花織を見下ろしている。
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