第17章 優しい嘘
土門が返事をするや否や、花織は内側のボタンを押して扉を閉めてしまった。土門はため息をつく。こうなってしまうともはや止めようがない。仕方なくシステムを起動し、タイマーをセットする。スタートボタンを押したと同時に中のマシンが動き始めたのが分かった。
土門はぼんやりと先ほどの花織の様子を思い返しながら文字盤を見直す。そしてあ、と声を漏らした。
「やべ……」
円堂たち雷門イレブンはこの修練場で格段にレベルアップした。そしてここの所は今までの難易度じゃ満足できなくなったのか、どんどん段階レベルを上げてここを利用している。ちなみに今のレベルは5だ。初めて利用した時はレベル1でもぼろぼろだったのに。
……何が言いたいのかというと、今起動した設定はレベル5のままなのだ。
さっと土門の顔が青ざめる。彼女の運動神経ならあるいは……と思いたいが、この修練場の特訓は生半可なものじゃない。初めてやった時はもう二度としたくないほど結果は悲惨でズタボロだったことを良く覚えている。花織も参加していたから身を以て知っているはずだ。
そのレベルが5倍も上、花織が怪我をしてしまったら大変だ。
この時点で、というか初めから土門はここで花織を待つと決めていた。"ひとりにして"そう言い放った時の彼女の表情。よほど思いつめているのだろう、何となくだが放っておいてはいけない気がした。こんな悩み、家族にも相談できないだろう。事情を知っている自分が聞かなければ誰が彼女の話を聞くのだろうか。
土門は無言で携帯を取り出す。自分一人では力不足かもしれない、そう思って応援を呼ぼうと思った、花織はきっといい顔をしないだろうが。その頼りの人物が電話に出る。土門は困り切って縋る様な声で話を切り出した。
「もしもし、あ、秋か?俺、ちょっと時間あるか……」
どこまでも彼は御人好しである。