第17章 優しい嘘
幸い、このプレイヤー二人は鬼道が花織を、風丸が花織を想っていることは互いに割り切っていた。互いに了承している仲なので取り立てて険悪と言うことも無くプレーが荒れる、などと言うこともない。だが、やはり周囲にとってはハラハラものである。何しろよく言えば二人は恋のライバル、悪く言えば元彼と浮気相手という最悪の組み合わせなのだから。
そんな日々が数日続き、緩和し始めた今日この頃。少し時間が経って仕舞えば、周囲の人間はすっかりそれに慣れてしまって、特に気にかける人物以外にとってはあまり気にならなくなりつつあった。適応力とは本当に凄い。
「……ねえ、土門くん。少し、いいかな?」
休憩に入り、ベンチに置いてあるタオルを拾い上げようとした土門に微かな声が届く。土門はハッとした、このごろ聞いていない花織の声だった。驚いて振り向くと、花織がいつもよりは格段に暗い面持ちで土門を見ていた。
「ん?ああ、花織ちゃん。どうかしたか?」
いつもと同じ声色、何もなかったように土門は明るい調子で花織に問う。花織はこくんと首を縦に振った。土門が要件を聞こうとしたその時だった。
「……」
「……土門くん?」
一瞬、土門の顔が強張る。どうしてか背中に視線を感じた。……大体検討はついているが。だが、花織に悟られない様にと首を振って土門は笑い、何でもないとその場を誤魔化した。
「あの、ね……。今日の練習終わった後、もしよかったら少し時間を貰いたいんだけど。……大丈夫?」
「ああ、構わねえぜ」
「ありがとう……。じゃあイナビカリ修練場で、待ってるから」